失禁による皮膚の
トラブルについて

皮膚科医師が語る【失禁による皮膚のトラブルについて】

はじめに

便・尿失禁とは、身体機能の変化や認知機能の低下によって、その人の意識に反して排泄物が体外に出ることです。失禁により排泄物が皮膚に付着することで皮膚が本来持つバリアが壊れ、湿潤・汚染環境が持続することにより皮膚のトラブルを生じます。このような皮膚のトラブルの発生を避けるためには適切なケアと、排泄物の量や性状や体型に合った保護用品(おむつ)を選択する必要があります。


便・尿が付着すると皮膚はどうなるのか?

何らかの理由で排泄が上手にコントロール出来なくなり、さらに排泄物の管理が不十分だと皮膚は便や尿で汚染されます。その状態が持続すると皮膚の水分量は増加し、重量が増えて浸軟状態【いわゆるふやけた状態】 に陥ります。「浸軟とは水に浸った皮膚表層(角質層)の水分が増加し、一過性に重量が増えてふやけることである」と定義されています。皮膚は浸軟するとバリア機能が低下し、傷を受けやすくなり、外界からの異物や微生物の侵入を受け入れやすくなります。

皮膚のトラブルを発生させる要因

1. 便・尿失禁

便失禁による皮膚のトラブルのなかに「肛門周囲皮膚炎」があります。この皮膚炎の発生には下痢に含まれる消化酵素による皮膚への化学的刺激が大きく関与しています。健常な皮膚はpH4.5~6の弱酸性であり、何らかの理由でアルカリ性に傾いてもアルカリを中和させる【アルカリ中和能】があるため数時間で弱酸性に戻ります。水様性の便(下痢)には腸液が多く含まれています。腸液はpH8.3とアルカリ性であるため水様の便が持続的に付着するとアルカリ中和能が働かなくなり、バリア機能が破綻してしまします。このような皮膚では、ただれや皮膚炎が生じやすく細菌や真菌にも感染しやくなります。
尿失禁が持続すると陰部は湿潤します。排泄された直後の尿はpH5~8の間で変動していますが、時間がたつと尿素がアンモニアに分解されアルカリ性に傾きます。尿が皮膚に長い時間接触していると皮膚は浸軟状態となり細菌が侵入しやすくなります。感染尿は、すでにアルカリ性に傾いており、こうしたアルカリ性の尿が長時間付着し皮膚を刺激することで皮膚のバリア機能が破綻しただれや皮膚炎を引き起こします。そして病気や治療などにより全身の抵抗力が低下している方は、わずかな皮膚のトラブルも重症化しやすく、細菌や真菌にも感染しやすいです。これらのただれや皮膚炎などの皮膚のトラブルは全身の感染症や褥瘡を発症させる誘因となるためなるべく生じないように心がることが重要です。

2. 便・尿付着を取り除く物理的刺激

浸軟した状態の皮膚は脆弱で抵抗力も低下しています。その状態で付着した便を除去する目的で洗浄や清拭を頻回に繰り返すことは、皮膚に細かな傷やびらんを生じ皮膚炎や細菌感染の誘因となります。失禁をする患者さんの多くは高齢で、皮膚のバリア機能の維持に欠かせない角質由来の脂質(角層細胞間脂質)と皮脂腺由来の脂質が減少しています。
発汗減少によるドライスキン、老化による皺の増加、つや・はりの減少、表皮細胞のバリア機能低下、新陳代謝の低下、皮膚の硬化、弾力性の低下といった要因が重なり皮膚のトラブルを引き起こす危険が高まります。 さらにきめの粗いガーゼやタオル、硬いペーパーで擦りながら除去する行為、脱脂力の強いアルカリ性洗浄剤・石鹸の選択、熱いお湯、強く洗浄する方法などは物理的刺激となり皮膚のトラブルをまねきます。

3. 不適切なおむつ(保護用品)の使用

おむつ内の環境は排泄(発汗、便、尿)によって高温多湿(湿度60%以上)になります。その上おむつの重ね使用をした場合には温度湿度も過剰に上昇します。その結果、皮膚は蒸れて浸軟します。さらにおむつが排泄物を吸収して厚みが増し、圧迫や摩擦を受け皮膚のトラブルが生じやすくなります。
おむつは各社、特徴があり値段も様々です。通気性の有るもの・無いもの、吸収量やサイズも異なります。おむつは不適切な選択・交換頻度によって皮膚の浸軟をまねき、皮膚のトラブルの要因となる場合があります。

皮膚のトラブルを予防するためには

適切なスキンケアを行うことと体型や排泄の状態に合ったおむつ(保護用品)を選択する事が大切です。

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