脳定位放射線治療センター

脳定位放射線治療センター

切らずに治す,ピンポイント 放射線治療を行っています

定位放射線治療とは

定位放射線照射治療とは,治療を必要とする病変(腫瘍や脳動静脈奇形)に対して多くの方向から微弱な放射線を集中させて照射し,結果的に病変部に集中した放射線照射を行う方法です.従来からの一般的な放射線治療に比較し,周囲の正常組織にあたる線量を極力減少させることが可能となる,いわゆる「切らずに治すピンポントの放射線治療」です.病変が小さい場合には一回だけの照射で済む場合も多くありますが,病変が大きい時や,病変の近くにとても重要な神経組織(視神経や脳幹など)がある場合には複数回に分けて照射する(分割照射と呼びます)こともあります.
いずれにしても定位放射線治療とは,周囲脳組織の被爆を極力少なくしつつ病変には強い放射線を照射する技術であり,理想的な放射線治療であると言えます.もちろん,定位放射線治療ではなく,従来からの一般的な放射線治療が望ましいこともあります

脳定位放射線治療センターの治療方針

定位放射線治療は,「切らずに治すピンポント治療」です.手術をしないで放射線治療だけで治せれば,それが一番良いことは明らかです.しかしながら,医学的見地からは,以下のように様々なことが考えられます

上記の1~5は患者さん毎に慎重な判断が必要であり,とても難しい医学的判断を要することです.
脳定位放射線治療センターは以下に述べるガンマナイフ,ノバリスという最高級の高精度定位放射線治療装置2台を有するとともに,当院脳神経外科は様々な最新の手術支援システムを用いた直達手術(全身麻酔下に行う開頭手術)も行っています.
つまり,切らずに治す治療のみならず切ることが必要な治療も数多く行っており,放射線治療・手術の両方において多くの治療経験とノウハウを有しています.切らずに治すという方針が,長期的に考えて患者さんにとってベストであるとは限りません.
脳定位放射線治療センターでは医学的に様々な観点から検討し,患者さんにとって最良と思われる治療方針を提示いたします.
また,転移性脳腫瘍の患者さんにおきましては,当院のがん治療センターと緊密な関係を保ち診療科の枠を越えた横断的な体制のもと,適宜複数診療科の専門医と相談しつつ,治療方針を検討します.

脳定位放射線治療センター 関連スタッフ

氏名
脳神経外科部長 周藤 高
脳神経外科副部長 松永成生
脳神経外科医師 竪月順也
脳神経外科医師 櫛 裕史
脳神経外科医師 小林夏樹
脳神経外科医師 飯田 悠
放射線診断科部長 守屋信和
放射線治療科副部長 松井とにか
中央放射線部長 佐藤寿人
放射線治療品質管理室 石川雄三
放射線治療品質管理室 下原義寛
中央放射線部 山本 迅
中央放射線部 山田太一
中央放射線部 加藤雅章

脳定位放射線治療センターの放射線治療装置

ガンマナイフ

ガンマナイフは半球状に配置された192個の線源(コバルト60)から出たガンマ線を脳病変領域に極めて正確に集束し高線量として照射し治療します.192個から出るガンマ線は一つ一つは微弱でこれらのビームが集中して高度の線量となり病巣領域に正確に当たるようになっており,誤差はミリメートル以下です.192個の放射線がレンズの焦点のように一点に集まります.192個から出るガンマ線は一つ一つは微弱で,これらのビームが集中して(黄色矢印)高度の線量となり病巣領域に正確に当たり,照射治療します.したがって,病変周辺の脳実質や血管などには照射線量は極めて少なく,放射線の影響が最小限になるようにしてあります.従来の手術では到達しにくかった脳深部や危険な部位でも照射治療できるようになりました.合併症のため手術の危険度が高い人や高齢の方でも治療可能となりました.また手術でとりきれなかった腫瘍,動静脈奇形や再発腫瘍に対しても効果が発揮されます. 治療に際しては,レクセルフレームと呼ばれる特殊なフレーム(枠)を頭部に装着して治療します. 詳細は,5.ガンマナイフをクリックしてください.当院脳神経外科ホームページのガンマナイフの項へのリンクです.当院の治療成績を含めて,詳しく記しています.

ガンマナイフ

ノバリスSTX

ノバリスSTXは定位放射線照射専用に開発されたリニアック照射装置です.多方向から照射される放射線をビームごとに強度を変化させて照射する強度変調照射(IMRT)などの多様な治療計画を可能とするソフトウェアと,精度の高い照射技術,赤外線とX線の監視システムによる体動追跡,微修正機能などのハードウェアが最適に融合した世界最高の装置と言えます.この優れた技術によって脳腫瘍,鼻咽頭部癌などの頭頸部病変のみならず,肺癌,肝臓癌,前立腺癌,脊椎腫瘍などの体幹部病変にも優れた治療効果が実証されています.頭蓋内病変に関しましては,患者さんの頭部を固定する際のヘッドピンは不要で,マスクによる非侵襲的な固定で照射が可能です.治療適応としては腫瘍体積の大きな病変(転移性脳腫瘍や髄膜腫,下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫などの良性腫瘍)や神経膠腫のようなびまん性(周囲の脳に染み込むように)に浸潤する腫瘍などが対象となります.ノバリスSTXによりこれらの病変に対して複数回での分割照射が可能となり,高率な腫瘍制御効果が期待できます. 詳細は,6.ノバリスSTXをクリックしてください.当院脳神経外科ホームページのノバリスSTXの項へのリンクです.当院の治療成績を含めて,詳しく記しています.

横浜労災病院には,上記のガンマナイフ,ノバリスSTXという定位放射線治療に他,通常の放射線治療を行うリニアック汎用放射線治療装置(バリアンEGX)があります.ガンマナイフ,ノバリスSTX,汎用リニアックをすべて有する施設は本邦では当院のみです.

脳神経外科疾患の手術治療等に関しては,脳神経外科ホームページをご参照ください

ガンマナイフ(Gamma knife)

当院脳神経外科ホームページのガンマナイフの項へのリンクです.種々の疾患に対するガンマナイフの効果や当センターの治療成績についての詳しい内容がご覧いただけます.

ノバリス STX (Novalis STX)

当院脳神経外科ホームページのノバリスSTXの項へのリンクです.種々の疾患に対するノバリスの効果や当センターの治療成績についての詳しい内容がご覧いただけます.

当センターの高精度放射線治療品質管理について

当院は2005年4月に放射線治療品質管理委員会を設置し,放射線治療の品質管理に関する総合的な体制を整備し,適切な運営と質の向上に取り組んでいます.2012年1月には放射線治療品質管理室を設置し,より安全な放射線治療を提供するため,日々,環境整備に取り組んでいます.

ガンマナイフの品質管理

ガンマナイフにおける定位放射線治療はピンポイントな治療であり,他の放射線治療と比較して正常組織の被曝を最小限に抑え,病変部だけを選択的に治療することが可能です.
一方,その治療の品質を保証するための精度管理は必須であり,精度は恒常的に維持されなければなりません.  ガンマナイフの品質管理については,日本ガンマナイフ研究会のQA委員会からガンマナイフQAガイドラインが提言され,本邦のガンマナイフ治療における品質管理の指針とされています.

■ 焦点精度について

最新式のガンマナイフでは,開発当時からの伝統的な交換式ヘルメット型コリメータから本体内蔵の線源移動式コリメータに変更されました.この構造的な変更により治療範囲の決定における焦点サイズの選択は劇的に高速化され,治療時間の大幅な短縮に成功しています.
一方で,機器の構造的に幾何学的中心(ターゲット)と放射線学的中心(ガンマ線の焦点)の一致性の確認が極めて重要な品質管理項目となり,専用の測定ツールも開発されています.

当院の放射線治療品質管理室は,毎日の始業前点検時に加えガンマナイフQAガイドラインに基づき,より精密な焦点精度試験を一年ごとに実施しています.

※焦点精度におけるメーカーのスペック:0.5mm以内
当院実績:0.21mm(2015年11月測定)

■ 線量的な精度について

ガンマナイフにおける高エネルギー放射線とは,コバルト60線源からのガンマ線をさしています(エネルギー:1.25MeV,半減期:約5.2年).他の放射線治療装置のように電気的に放射線を発生するのではなく,ラジオアイソトープ(放射性同位元素)からの雑みのない安定した放射線を利用していますが,線源のコバルト60は日々崩壊し半減期に従いガンマ線の放射率は変化しています.そのため治療計画装置と実機の線量率の一致試験も重要な品質管理項目の一つです.

線量測定用ファントムと指頭型電離箱

線量測定の様子


※焦点における吸収線量測定(治療計画装置との比較)
ガイドライン:±2%以内
当院実績:-0.13%(2016年9月測定)

■ その他の品質管理項目について

当院の放射線治療品質管理室は,ガンマナイフQAガイドラインに沿った品質管理を実施し,ガンマナイフ治療における確実性の保証に努めています.
以下にガンマナイフQAガイドラインの項目と許容誤差および当院測定記録を記します.

ガンマナイフQA項目と頻度

頻度 項目 許容誤差 当院測定結果
毎日(毎回) PPS Focus precisionテスト ±0.5mm ±0.10mm 以内
毎月 タイマの安定性(再現性) ±2% ±0.02% 以内
タイマの直線性 ±3% ±0.20% 以内
タイマの精度 ±4% ±0.04% 以内
タイマの端効果 ±3% ±0.08% 以内
半年 線量測定 治療計画装置との比較 ±2% -0.13%
線量測定 前回測定値との比較 ±2% -0.28%
毎年 焦点中心精度測定 ±0.5mm ±0.21mm

平成28年度 横浜労災病院 放射線治療品質管理委員会資料より

ノバリス STXの品質管理

放射線治療は,医師や放射線治療品質管理士,診療放射線技師など多職種間の連携を基にして多くのステージ,複雑なプロセスを経て施行されます.また,最終的な投与線量の不確かさは,各ステージの不確かさが合成されたものになります.よって,それぞれのステージで発生する不確かさが最小限になるように管理を徹底しなければなりません.

放射線治療装置の品質を担保するためには,多くの品質管理項目を実施する必要があります.当院における品質管理項目は,IEC976※1およびIEC977に準じて作成された従来の外部放射線治療装置の保守管理プログラムに加え,AAPM TG-142の報告※2などのガイドラインを参考にして決定しています.
定位放射線治療とは,誤差1mm以下の高い精度で,病変の形状に一致させて放射線を集中して照射する治療法です.ノバリスSTXでは,多くの場合,照射範囲を形成するマルチリーフコリメータ:MLC※3の位置や照射方向を決めるガントリの角度を変化させながら進めていきます.また,画像誘導放射線治療:IGRT※4は,定位放射線治療に欠かすことのできない技術であり,これに伴う品質管理の実施も求められます.以下に当院で実施している品質管理項目の一部を示します.

■ 中心精度

○ Winston-Lutz試験

放射線治療では,治療装置の中心と治療室内の壁面に取り付けられた投光器のレーザーを一致させます.加えて,IGRTに用いる位置照合機器の中心とも一致していることが必須となります.AAPM TG-142の記載内容は,頻度:年一度,許容値±1mmとありますが,当院ではより厳しく,実施頻度を毎月,許容値を±0.5mmと定めて実施しております.


■ マルチリーフコリメータ:MLCの動作およびガントリ回転中の精度確認試験

ノバリスSTXは,高精度マルチリーフコリメータを搭載しており,中央付近のリーフ幅は2.5mmと薄く,病変に一致した照射範囲を形成することが可能です.治療中は,MLCの位置をダイナミックに変動させながら行いますので,MLCの位置精度や移動速度などの品質管理が必須です.
また,治療中はガントリを回転させながら行いますので,ガントリの角度依存性・回転動作の確認やMLCなどの変動パラメータと正確に同期し,計画通り適切に行えていることを確認します.
これらに関連する品質管理項目を以下に示します.



■ 画像誘導放射線治療:IGRTに関わる精度管理

○ End to End試験

放射線治療は,多くのステージを経て治療計画を立て実行します.治療の際,画像照合で重要となるのは,これまでに関連した複数のシステムの基準となる座標系が一致していることです.


脳定位放射線治療センター受診のご案内

当センターの外来診療は月・水・金曜日(14時〜16時30分)に3階の脳神経外科外来(A6ブース)で行っています.原則として電話による受診予約をお願い致します.(当院予約センター:電話番号:045-474-8882〜4にて承っております)その際は,「脳定位センター紹介枠」という枠での予約をお願いします.この専門外来では,ガンマナイフに限らずノバリスも含めて各患者さんにとって最適な治療を検討しています.

リンク

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